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福岡地方裁判所 平成4年(わ)343号 判決 1992年9月24日

本店の所在地

福岡県太宰府市連歌屋一丁目一三番一号

株式会社山陽衛生事業センター

(右代表者代表取締役 永井竹一)

本籍

同市青山二丁目六番

住居

同市青山二丁目六番四一号

会社役員

永井竹一

昭和一九年一〇月二四日生

本籍

福岡県春日市千歳町一丁目一番地の一

住居

同市千歳町一丁目一番地の一ライオンズマンション春日四〇一号

会社役員

永井武生

昭和二五年一一月二日生

事件名

被告人三名に対する法人税法違反被告事件

公判出席検察官

富松茂大

主文

被告人株式会社山陽衛生事業センターを罰金二〇〇〇万円に処する。

被告人永井竹一を懲役一年六月に、同永井武生を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から、被告人永井竹一、同永井武生に対し、各三年間それぞれの刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人株式会社山陽衛生事業センター(資本金二〇〇〇万円、以下「被告会社」という。)は、福岡県太宰府市連歌屋一丁目一三番一号に本店を置き、し尿汲み取り及び浄化槽清掃等の事業を営むもの、被告人永井竹一は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているもの、同永井武生は、被告会社の専務取締役としてそのし尿汲み取り部門を統括しているものであるが、被告人永井竹一及び同永井武生は、共謀の上、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、し尿汲み取り及び浄化槽清掃による各収入の一部を除外し、仮名定期預金を設定するなどの方法により、被告会社の実際の所得を秘匿した上

第一  昭和六二年五月一日から同六三年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二五五一万三五八五円であったのに、同年六月二七日、同県筑紫野市大字二日市七〇八番地の五所在の所轄筑紫税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の実際所得金額が五一五一万四九四二円で、これに対する法人税額が一九三五万九二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五〇四〇万二一〇〇円と右申告額との差額三一〇四万二九〇〇円を免れ

第二  昭和六三年五月一日から平成元年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三〇六二万一五九二円であったのに、同年六月二九日、前記筑紫税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の実際所得金額が六六二二万八八七〇円で、これに対する法人税額が二五〇八万六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五二〇八万九九〇〇円と右申告額との差額二七〇〇万九三〇〇円を免れ

第三  平成元年五月一日から平成二年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二二二〇万二五〇八円であったのに、同年六月二六日、前記筑紫税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の実際所得金額が六一九〇万四四五八円で、これに対する法人税額が二二七六万五九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四六八六万六〇〇〇円と右申告額との差額二四一〇万一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)

判示全部の事実について

1  被告人永井竹一及び同永井武生の公判供述

2  被告人永井竹一(検乙二ないし九号)、同永井武生(検乙一三ないし一八号、二〇ないし二六号)の検察官調書

3  高尾哲也、橋野美代子、伊村武英、前田敏雄、田中和幸、西隆夫、永井紀子、永井英一(八通)、永井義和(七通)、毛利富美子(抄本)の検察官調書

4  査察官調査書(検甲二四号ないし三六号、三八号)

5  脱税額計算書説明資料

6  登記簿謄本

判示第一の事実について

1  脱税計算書(検甲四三号)

2  確定申告書(平成四年押第一〇七号の1)

判示第二の事実について

1  脱税額計算書(検甲四四号)

2  確定申告書(前同押号の2)

判示第三の事実について

1  被告人永井武生の検察官調書(検乙一九号)

2  脱税額計算書(検甲四五号)

3  確定申告書(前同押号の3)

(法令の適用)

罪条(被告人永井竹一、同永井武生)

刑法六〇条、法人税法一五九条一項

(被告会社)

法人税法一五九条一項、二項、一六四条第一項

刑種の選択(被告人永井竹一、同永井武生)懲役刑

併合罪(被告人永井竹一、同永井武生)

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重)

(被告会社)

同法四五条前段、四八条二項

刑の執行猶予(被告人永井竹一、同永井武生)

同法二五条一項

(量刑の事情)

本件は、太宰府市内において、し尿汲み取り、運搬、浄化槽清掃などの業務を独占して行なう被告会社の代表取締役と専務取締役が、共謀の上、それぞれ担当する浄化槽清掃業務、し尿汲み取り業務の集金代金中から現金を抜き取るなどの売上代金除外の方法により、被告会社の所得を隠匿し、被告会社の三事業年度分合計八二一五万円余の法人税額の納付を免れたという事案である。

所得隠匿工作の態様は、代表取締役の被告人永井竹一と専務取締役の同永井武生が会社従業員をも巻き込んで、会社ぐるみで常習的に売上げを除外したというもので、隠匿額も巨額に上り、国民の基本的義務である納税義務を無視し、会社を私物化したその専横ぶりは甚だしく、被告会社が太宰府市から市民生活に不可欠な公共性の高い業務を独占的に委託されていることなどを考えると、被告人らに対しては厳しい非難が加えられるべきである。

竹一においては、交際費等の資金目的の外、被告会社の将来の不安に備えて利益を社内留保する意図もあったことは窺われるものの、社員を指導監督する立場にありながら、自らも売上除外を行なっていたことからすると、その責任は重く、武生においては、自己の交際費、遊興費欲しさという動機とその放縦な費消振りからは、納税義務の意識のかけらも見いだすことはできず、その責任もまた軽いものではない。

他方、被告会社は、本件ほ脱に伴う重加算税など三億円を超える税金を既に納付していること、被告人両名もさしたる前科がないこと、竹一は、今回の事件を反省し、ずさんな経理関係と社員の規律を改め、被告会社の義務、経営の健全化を誓っていること、武生も、反省の情を示し、竹一とともに、被告会社の再出発を望んでいることなどの有利な事情も認められる。

以上を総合考慮の上、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仲家暢彦 裁判官 洞鶏敏夫 裁判官 足立正佳)

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